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蒼の十字架46
「ん~?でも中途半端に起きられたりしたら面倒じゃないですか~?」

「まぁねぇ」 

行動には引いていた王子だったがどっちかというと王子は基本、ノリはこうだから悪い気はしていなかった。

「それで、藍に行く気になったんですね~?」

「まぁ、ちょっと行かないわけにはいかない状況だろう」

「いっそ、藍にくればいいじゃないかですか~?」

「一応、俺の立場って蒼の王子だからね」

「だからこそ、藍にとっては嬉しいんですよ~?」

「それはそうだろうね」

マイペースが丸見えなこの女性に対して自由奔放と言われている王子もちょっとペースを崩されていた。

「ま、それはそれとして行きましょうか~?」

女性が先に抜け道から城の外に出て、王子は倒れているタイセイに文字の書いた紙を服の中に忍ばせ、女性の後に続いて外に出た。

「さ~て、私がここにいることバレたらメンド~だし、早く行きましょうか~」

「その前に買い物したいから、待ち合わせ場所決めないか?」

「その手には乗りませんよ~?私から逃げられると思って~?」

「いや、俺が藍に行くのは俺の意志。行く必要もあるしな。だから、必ず合流するから」

王子の言葉と目を見て女性は少し考えてから頷いた。

「ん、分かりました~。信用しましょう~」

そういって王子の両肩に手を置いて、なんか呟き出した。
王子は身体が何かに包まれた感覚を覚えた。

「今のはまじないです~。今日中に藍の敷地内に入らなければ王子の身体は凍りつきます」

「全く信用してねーじゃん」

王子は苦笑しつつ、待ち合わせ場所とある程度の時間を女性に告げて城下町へとおりていった。
女性は王子の言われた場所が若干分からなかったため、そこを探しに行くことにした。
しゃべり方からも分かる通り、間の抜けた性格みたいだ。


蒼の十字架45
一方、その頃、その話題の蒼の王子の動向に視点をようやく向けようと思う。
城をいつも通り抜け出そうしているところからだ。

「さてと、サクは今、来れないはずだから今のうちに……」

王子が城を抜け出すルートは一つではない。
サクが潰せば潰すほど王子も新たに見つける。
もちろん、穴を開けるとかではないが城の性質上、他国に攻められたさいに裏の抜け道的なものは限られた上の人間は知っている。
当然、サクも王子も知っているからの駆け引き……いや、不毛なやり取りが続いている。
そして王子がそこの場所に近づいていった時にとある人物が声をかけた。

「王子、どこにいかれるので?」

「ッ!?」

王子が慌てて声の方向を見ると男性がニッコリと笑って立っていた。
その男性を確認すると王子は大きなため息をついて、目を細めた。

「驚かせるな、タイセイ」

「なに、オレって分かって安心してるんですか?」  

「もちろんお前なら……」

「サクさんに伝えるっすね」

タイセイのあっけらかんとした態度でいい放った言葉に王子は顔色が変わった。

「ちょっと待て!お前、裏切るのか!?」

「いやー、直属の上司はサクさんだから」

「俺はその上だぞ?」

「だから見逃して来ましたがそろそろ捕まえないとサクに問題がいったらさすがにオレも考えもんかなーって思って」

今まで割と王子の動向を見張っていたタイセイ。
もちろん、サクの指示だがそれでも王子は抜け出してきた。
どうしてそんなことが出来たのか、その理由は……

「その様子だと今まで通りの金額じゃ済まなそうだな」 

最低な理由だった。
王子としての権力を使うよりタチが悪いがそれで見逃してきたタイセイもタイセイだ。

「いやー、今回ばかりはね、見逃せないんすわ」

タイセイのお金にも揺るがない言葉に王子は何かに勘づいた。
まぁ、お金で本来、王子を城から逃がしていたタイセイがここまでお咎めがないのも大分、問題なのだがタイセイも今回は逃がさない気らしい。

「さてはお見合い話、まとまったな?」

「さぁ?オレじゃ分からないですけどサクさんが色々と多方面からの連絡を請け負ってるんで可能性は高いかもっすね」

タイセイの言い方でタイセイが本当に知らないことは分かった。
そして恐らく、お見合い話は進んだこともある程度、事実であろうと思っていた方がいいだろうと王子は察した。

「ふぅ、仕方ない。タイセイ、引く気はないか?」

「いや、オレのセリフなんだけどね」

そう言った途端、タイセイの身体に痺れが走り、その場に倒れ込んだ。
王子は少し顔を歪めた。

「ちょいとやり過ぎじゃね?」

さすがの王子も引く感じではあったらしい。


蒼の十字架44
「まぁ、真面目な話、リノだけ行って王子と接触したらリノの職業柄、藍も蒼が何か仕掛けてくると思うかも知れないだろ?だから、蒼の人間も着いていく必要はある」 

「最初からそれ言いなさいよ……」

「いや、俺が蒼の人間なんて証明出来ないだろ?」

「藍に入れた時点でそうだから」

「は?」

「あそこ、特別な魔術を使うお方がいてな。他国の人を入れない結界……簡単に言えば見えない壁を作ってるから」

「凄い人がいるもんだな……ん?じゃあ、逆にリノって入れるのか?」

「私は許可もらってるからね。関所で手続きは必要だけど」

「なるほどね」

「さて、いいか?今日の段取りをまとめるぞ。もう昼過ぎてるんだ」

ユウジの質問がまるで時間の無駄だったと言わんばかりにナオナリが話を戻し、進めた。

「俺は猟兵の一件があるから城から離れられないだろう。逆に言えば常に俺は城にいるってことだ」

「つまり、なんかあったら連絡しろってことね」

「そういうこと。サクさんは忙しいだろうからな」

ナオナリの発言にサクはすぐに否定を入れ、リノに頼み込んだ。

「待て、リノ!俺にまず連絡しろ!何かあったらすぐ駆けつける!」

真剣な表情で言われてリノは戸惑いつつ、ちょっと嬉しい気持ちがわいていた。
確かにセリフだけ聞けば女性は勘違いする。
もちろん、リノは勘違いはしてないし、サクの発言の本心も分かっていてだが。

「いや、サクさん……そんなサクさんに直にやり取りなんて便利なこと出来ませんから」

「一応、サクさんの地位的には宛てにすれば出来るけどな。サクさんは城に帰ったらそれどころじゃないはずだ」

ナオナリの指摘通り、サクが城に帰ったら、まず王子のことでの対応をして各部に連絡を取り仕切る。
更に翠に向かっている部隊とのやり取りなどやること、というかやらされることは数知れない。

「というわけで俺も何が出来るわけではないがなんかあったらそれなりのやつを送るから」

「それなりってハヤトいないんでしょ?ルイとか?」

「ルイもいない。一緒に行ってるから」

「バカじゃないの?危機感なさすぎじゃない。後、誰かいるっけ?」

「それだけ王子の見合いはうちにとっては重要だから」

リノが悪態をつくのでユウジがフォローする。
ナオナリはそれに対して適当に返事をしてこの場は解散となった。
もちろん、リノはナオナリの援護は期待しないことに決めたのは言うまでもないだろう。


蒼の十字架43
「サクさんが行ったら大問題だろ」

「ほんと……自分の立場を分かってください」

「やっぱり藍でも蒼の役職というか重要な人物は把握してるのか?」

「そりゃあな、元々っつーか蒼の一部ではあるし」

サクは王子の側近なため、他国でも顔は割れている。
そうでなくても城に仕える中でも上の立場だ。

「ナオナリがダメでサクさんもダメとなると……」

ユウジが恐る恐る言うと……

「お前しかいないな」

ナオナリが呆気なく名指しした。

「いや、待て。さすがに怖いぞ?」

「戦いに行くわけでもあるまい。まず王子を見つけて事情を聞く。それだけだ」

「いや、引っ捕らえて引きずってでも連れて……!?」

サクの発言の最中にリノが口を塞いだ。
一応、布をつける配慮もしていた。

「でも一応、王子の存在がバレでもしたら事態は大きくなるし、私も着いてく。適任でしょ?」

「まぁ、リノの戦闘力と速さなら適任だがユウジと二人っきりを狙ってるのか、女狐」

「違うわよ!」

「今は冗談はほどほどにしといてリノだって顔は割れてる。入れるのか?」

「一応、情報提供で足を運んでる。依頼もあるしね。藍のプラス情報もあるし、対応は可能だと思うわ」

「じゃ、藍にはユウジとリノに行ってもらうとして……」

次の段取りに移ろうとしたナオナリに対してユウジがストップをかけた。

「俺が行く必要ってあるのか?」

「あん?」

「いや、リノ的にも一人の方が動きやすいだろうし、王子とも認識はある。サクさんが行くならまだしも俺が行ってなんか役にたつのか?」

「お前な、女狐の気持ちを考えろよな」

ナオナリが言い切ったところで先日、猟兵と戦った後に茶屋場の看板娘に話を聞いてた際にサクに投げつけたオモチャの小刀を投げつける。
だが、ナオナリは同じような小刀で弾いてみせた。
リノの苦虫を噛んだような顔と涼しげなナオナリにユウジは苦笑するしかなかった。


蒼の十字架42
切り出していいものか悩んだがサクが顔をあげた際にユウジが聞いた、ナオナリの聞けという視線を感じて仕方なく。

「えっと、何か心当たりが?」

何か、と聞くより切り込んでみた。
というか何かあるぐらいサクの反応で馬鹿でも分かる。

「多分、リノが見た女性は藍の人だ」

そもそもなぜ藍という言葉がキーワードになっているかがここら辺で紐解いていかなければならないのだが、その点について一番疎いユウジがそのことを聞いてみた。

「藍って結局、どういう場所なんですか?」

「そっからか」

ナオナリが若干、呆れたような声を出した。
ただ藍に関しては蒼の人間も知らない人間の方が多い。
名前ぐらいはって人も探すのも大変だろう。
大体、一般的に藍の区域内辺りには近づくなと言われているに過ぎず、その実態を知ろうとする者もいない。
いたとしても誰も知らないから話にならないし、知っている言わば蒼のお偉いさんと話す機会を持つものは少ないため、結局はほとんどの人はユウジ状態だ。
いや、ユウジは藍の名前を知っていたため、これでも分かっている分類に入るだろう。

「藍は元々、蒼の国の支配下だ」

「最も藍という国は存在はしてない。文面では一応は蒼の国の一部という扱いにはなっている」

ナオナリとサクが交互に説明をし始める。

「国ではない?」

「あぁ。蒼の一部の一族が独立し、あの一帯に自分たちの敷地を作り上げ、暮らしている」

「ただ、国と認められる基準を満たしてないうえにほぼ蒼の今の国王たちと仲違いで勝手に作った場所なだけに蒼であって蒼ではない。だから藍と別の呼称をつけたんだ」

「なるほど」

ユウジが二人の説明で納得しているがリノが不思議そうにナオナリを見ていた。
その視線に気づいたナオナリはリノが聞いてくる前に聞いた。

「なんだ女狐、俺にまで好意を持つなよ。今の状態でさえ俺はヤキモキしてるんだが」

「違うわよ!サクさんはともかく、なんでナオナリさんがそんなに詳しいの?」

「あん?女狐、知らないのか?」

「えっ?」

ナオナリが本当に意外そうな言葉にサクが続いた。

「ナオナリは藍の出身だからな」

「出身って言い方もおかしいですけどね」

「えっ!?ナオナリさん、藍の出なの?」

「なんだ、女狐。本当に知らなかったのか?」

「私、情報を集めるのが仕事だけど知り合いの過去とか素性とかは私の意志では調べないからね」

「じゃあ、ナオナリが行けばいいわけか?」

「アホ言うな、ユウジ。なんで藍が蒼から言わば独立的なことをしたと思ってるんだ。その藍から出て蒼の兵士をやってる俺が藍に言ったら門前払いか二度と出られないように拘束されるわ」

「そんなにおっかない人の集まりなのか?」

「全員がそうではないが俺の実力で少しは分かるだろ?」

ナオナリの実力が基準にされたら本当にただのおっかない人の集まりでは過ぎないが、やはり一筋縄ではいかないようだ。

「とにかくいる場所が分かった以上は行くしかない!」

勢いよく立ち上がるサクをナオナリとリノが速攻で止め、抑える。
一連の行動の三人のそれぞれの速さにユウジは呆れるほかなかった。




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