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蒼の十字架47
そして王子は城下町をいつも通りに歩いていると騒ぎが起きているのに気づいた。
いつもは自分が騒ぎを起こす側だが起きているのはもっと関わりたくなるということで何の迷いもなく、首を突っ込み、結果として一応、人助けとなった。
それから、これから必要な物などを用意して時刻的にいい頃合いとなった。
自らが指定した場所にそろそろ向かおうかというところで人とすれ違った。
その瞬間、一言呟かれた。

「蒼の王子だな?」

王子はさすがに足を止め、その人物を見るため振り返る。
声色的に男というのは分かったが聞いたことのない声だった。

「何かな?」

王子は誤魔化すことなく答える。
それに相手が今度は足を止めた。
そして小さく嫌な笑いをこぼして王子と対峙した。

「認めんの?」

顔を見せた男は今度は苦笑した顔で王子に問いかける。
それに対して王子はらしく答えた。

「隠さなきゃいけないほど悪いことはしてないからね」

「へぇ、蒼の王子は放蕩で有名だが?」

「身内にしか迷惑はかけてない。国はしっかり見ているつもりだけど?」

「ま、そうみたいだな。だからこそ……!」

男は腰につけていた得物を抜いた。
普通の刀みたいに見えるが僅かに剣先に向かうにつれて曲がっているように見えた。

「それ、今、どうやって抜いたんだい?」

「よく、今の状況でそれを聞くな?」

男は王子のマイペースさにさすがに本気の苦笑をした。

「さて、この状況……いくら放蕩王子でも察するだろ?」

「まぁ、そこまで平々凡々とは生きてないからね。ただ、2点ほど確認を取っておかなきゃ、こっちもむざむざと切られる気はないよ?」

「ふん、なんだ?」

「君は緋の人かな?」

王子の問いに男は動揺した。
もちろん、それを態度にまで明らかには出さなかったがズバリ言われて男は反応しないわけがない。
そして見抜いていた王子だからこそ、僅かな動揺を見逃さなかった。

「あれ、ただの放蕩王子だと思ったかな?」

「いいや、一応は聞いていた。ただ、実際そこまでとは思わなかった。それだけだ」

「ふむ。ではもう一つ確認させてもらっていいかな?」

確かに王子は二点確認したいと言った。
男もこの王子がどこまで化けているのか、気になったため注意深く聞くことにした。

「緋の人間はどこまで把握しているのかな?」

「な、なんだと?」

王子の言っていることが男はまるで分からないわけではなかった。
しかし、指していることは分かってもそれに対して男が答えられるかとなると話は変わってくる。
つまり……

「ふむ、君はそこまでの立ち位置ではないのか」

「っ!」

男は少し下げていた剣先を上げ、構え直した。
この王子は表の情報、そして裏の顔、総合的に照らし合わせてもまだ底を見せてはいないと。
ここで殺っとかなければ不利益でしかないと判断した。
しかし、剣を構えても王子は涼しい顔をしていた。
男は殺気を放ち、普通の人でさえ斬られると察することが出来るはずなのに……
そう思うと男は逆に動けなかった。

「剣を構えた以上、躊躇したらやられるよ?」

「ぐっ!」

余裕綽々の王子にイラっとした男は手足に力を入れて一歩を踏み出し、斬りかかった。
しかし、その瞬間だった。
王子と男の間に氷の壁が突然現れた。





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